航空宇宙分野のバーチャル・リアリティ技術を応用した運転行動測定装置(研究用ドライビングシミュレータ)を納入

2002年03月25日

 

川崎重工は、厚生労働省の研究機関である独立行政法人産業安全研究所※1に、航空宇宙分野におけるバーチャル・リアリティ(仮想現実)技術を応用した運転行動測定装置(研究用ドライビングシミュレータ)を納入しました。

同研究所では、産業災害を防止するため各種災害現象の解明と災害防止技術の開発に関する研究を広範囲に行っています。近年では、災害に対する人間工学的な研究に取り組み、ヒューマン・エラーや効果的な教育・訓練手法の確立に関しても研究しています。

今回納入した研究用ドライビングシミュレータは、交通分野の災害事例としてトラック集配送業務を模擬したもので、ドライバーに様々な危険状況を体験させると同時にシミュレータ運転中におけるドライバーの運転行動を測定し、そのデータを記録・解析する機能を備えています。同研究所では今後本機材を使用し、ドライバーごとの運転傾向や教育訓練の前後における運転行動の変化などを解析・比較検討することにより、シミュレータを利用した模擬体験の有用性および教育・訓練手法の明確化・一般化について研究していく予定です。

<運転行動測定装置の特長>

(1)シミュレータとしての基本性能
HMD※2の採用により、シミュレータ体験者は、前後左右上下の全周視野、および視点を移すことによる「覗き込み確認」のような、スクリーンタイプでは再現の困難な実際の運転時に行う確認動作をありのままの視野で体験できます。
シミュレータで走行体験する環境は市街地と郊外から構成され、その中を自由に走行できるとともに、危険場面が盛り込まれた15コースから目的に応じたコースを選択することができます。
シミュレータには当社がこれまで培ったバーチャル・リアリティ技術を応用し、リアルな視界のほか、モーションベースによる加減速感、エンジンやスリップ等の効果音、模擬振動、ハンドル感覚等、実車運転を再現するための工夫を施されています。
(2)記録・解析機能
運転操作に関する運転データとHMD表示映像を記録できます。運転データの記録項目はステアリング、アクセル、ブレーキ、ハンドブレーキ、クラッチ、シフトレバー、車両の位置と向き、速度、頭の位置と向き、経過時間などです。
解析機能により、運転データをグラフ表示し運転操作の特長や変化などを把握することができます。記録した運転データ・HMD表示映像は、目的に応じて一般のパソコンソフトで利用することもできます。

当社はこれまで航空機の研究開発を通じシミュレータ技術のノウハウを培い、航空宇宙以外の分野においても、研究開発・教育訓練・アミューズメント向けなど様々な用途・規模のシミュレータを開発・納入してきました。近年の民間向け納入例としては、博物館向けのハンググライダーシミュレータ、HMD※2を利用した教育訓練用の二輪車運転シミュレータ、トラック運転シミュレータ※3などがあります。
今回の納入はこれらの技術と実績が評価されたものであり、本機材を通じて、災害防止分野の教育訓練手法の確立に寄与できるものです。当社は今後も研究開発・教育訓練などの分野において、様々なニーズに応えるべく研究開発を推進し、付加価値の高い製品を提供することを目指していきます。

※1 独立行政法人産業安全研究所:
厚生労働省所轄の研究所であり、産業災害を防止するため各種災害現象の解明と災害防止技術の開発に関する研究を広範囲に行っています。近年の災害動向の変化に対応し、システム工学、制御工学、人間工学的な研究に取り組んでおり、今回の納入機材は研究部 境界領域・人間科学安全研究グループにて運用されます。

※2 HMD(Head Mount Display):
ヘッドマウントディスプレイ。ゴーグル状の器具に一対の超小型表示機を組み込み、人間の左右の目に映像を映し出すことにより視界を与えることができる機材。納入されるシミュレータでは位置検出器と組み合わせ、頭部の向きに合わせた映像を表示しています。

※3 トラック運転シミュレータ:
ヤマト運輸と共同開発したセールスドライバー向けのトラック安全運転教育シミュレータ"NEKODES"、今回納入した製品の姉妹品にあたります。