国内初のジメチルエーテル(DME)の液相燃焼に成功

2002年02月26日

川崎重工は、自社開発した7MW級ガスタービン用燃焼器を用いて、ジメチルエーテル(以下、DME)の液相燃焼(液状での噴霧燃焼)に国内で初めて成功しました。

DMEは、天然ガス等から合成ガスを経て製造される、LPガスに類似した物性を有する液化ガスで、以下のような特長があるため、次世代の燃料として注目されています。

(1)
常温常圧では気体であるが、加圧あるいは低温によって簡単に液化することから、輸送時は液体、消費時は気体になり、ハンドリングが容易なため、分散型燃料に適している。
(2)
硫黄分や窒素分を含まないクリーンな燃料であり、都市ガスに近い燃焼性を有している。また、大気中での分解時間は数十時間程度で温室効果やオゾン層破壊の懸念がないため、環境負荷が小さい。
(3)
DMEの原料となる天然ガスは、我が国近隣のアジア太平洋地区を中心に、今後約60年間は採掘が可能とされている。また天然ガスを液化するには大規模な設備が必要なため、ガス田も大規模なものしか経済的に商用化できないのが現状である。しかしDMEは中小ガス田でも経済的に商用化できるため、供給地が増え、エネルギーセキュリティーにも貢献できる。


従来、ガスタービン用燃料としては、天然ガスやLPガスなどの気体燃料と灯・軽油やA重油などの液体燃料が使用されてきましたが、当社ではDMEの持つ上記の特性に着目し、1990年よりDMEをガスタービン燃料として利用する技術の開発(注1)を行ってきました。その結果、昨年12月には、自社開発した600kW級の再生式ガスタービン「S7A」において、国内で初めて、DMEを気体燃料として、実機運転(注2)することに成功しました。

しかし、DMEを気体燃料として利用するためには、液化したDMEの蒸発器や燃料配管の加温が必要であり、設備が大型化・複雑化するという問題がありました。そこでDMEを液体のまま燃焼器内に噴射し、燃焼させる(液相燃焼)技術の開発も平行して進めてきました。

そして当社は、このたび当社製7MW級ガスタービン「M7A」におけるLPGの液相燃焼用のものをベースに開発した新型燃料ノズルを用いて、DMEの液相燃焼に国内で初めて成功しました。

新型燃料ノズルは、液化DMEの一部を気化させて得られる気化熱を利用して燃料通路を冷却しており、従来型の燃料ノズルでは、先端部が高温なため、DMEを液体のまま噴射しようとしても、一部が燃料ノズル内部で気化し、流量制御ができなくなるという問題(ベーパーロック)を防止しています。またこの新型燃料ノズルは、DME以外に、天然ガス、灯・軽油を噴射できる3種燃料対応型で、始動時には天然ガスまたは灯・軽油を使用し、DMEの圧力が高圧になった時点で、DMEの使用に切り替えることにより、DMEを常に液体の状態に保つことができます。

今後当社はLPGおよびDMEの液相燃焼技術を、自社開発した600~18,000kWの全てのガスタービンに適用拡大し、産業用ガスタービンのパイオニアメーカーとして顧客のニーズに応えていきます。

(注1)三菱ガス化学、伊藤忠商事の協力を得て実施
(注2)岩谷産業の協力を得て実施