米国機械学会より、鉄道車両技術論文で日本企業初の最優秀論文賞に内定

2002年02月06日


川崎重工は、2001年4月17日~19日にカナダ・トロントで開催された米国機械学会(ASME)、米国電気電子学会(IEEE)共催の鉄道会議において発表した当社の技術論文が、米国機械学会鉄道輸送部門の最優秀論文賞(The best paper for the 2000/2001 year)に内定しました。なお、この鉄道会議は年1回北米で開催され、日本企業の受賞は初めてのことです。授賞式は、本年4月23日~25日に米国・ワシントンD.C.で開催される同会議にて行なわれる予定です。

今回受賞内定した論文のテーマは、『鉄道車両の耐衝突性能に関する研究』です。この論文は、1997年に受注したニューヨーク市交通局向け地下鉄電車R142A(ベース車両:400両、追加車両:120両)において、衝突時に運転室、客室スペースの安全性を確保しつつ、いかに衝突エネルギーを車体構造で吸収するかについて研究した解析内容および試験結果をまとめたものです。

近年、鉄道車両、自動車、船舶などの輸送用機器では、人命保護や環境保護の観点から、衝突性能評価の必要性が高まっています。当社が受注した地下鉄電車R142Aでは、(1)衝突エネルギーを吸収できる車体構造、(2)衝突荷重に耐える強固な乗客居住区など、の実現が必要でした。そのため非常に高度な解析、一両分の衝突試験の実施、さらにその解析内容と試験結果との整合性を必要としました。

そこで、まず衝突エネルギー吸収部分の解析、試験を実施し、そこから得られた結果をもとに、1999年1月に米国コロラド州において、米国初の鉄道車両一両分の衝突試験を実施しました。その結果、非常に高い精度で解析と試験結果が合致することを確認しました。またこの研究で得られた成果を用いることで、耐衝突性能を持つ鉄道車両を開発・設計することが可能になりました。また当社の高い解析技術が客先にも認められ、地下鉄電車R142Aの後に契約した地下鉄電車R143では、衝突試験が免除になりました。

当社は、ニューヨーク市交通局向け地下鉄電車を1982年に受注して以来、2001年12月末までに936両を納入しており、さらに今後2003年度までに349両を納入する予定です。なお地下鉄電車R142Aは、1999年から2001年12月末までに371両を納入しています。また当社はニューヨーク市交通局向け地下鉄電車以外にも、ボストン、ニューヨーク、ワシントン近郊向け客車をはじめ、シンガポール、台北の地下鉄電車など、すでに3,000両以上の海外向け鉄道車両を納入しています。

当社の鉄道車両生産拠点は、以下の3個所があります。

兵庫工場
  国内車両および北米以外の輸出車両の製造、台車枠の製造ならびにシステムの開発・設計を主業務とするマザーファクトリー。
Kawasaki Rail Car Inc.(ニューヨーク州)
  北米向け各種鉄道車両で豊富な実績を持つ。
Kawasaki Motors Manufacturing Corp. U.S.A.(ネブラスカ州)リンカーン工場
  最新鋭の鉄道車両工場で、2001年11月より、ニューヨーク市交通局向け地下鉄電車の艤装工程の稼動を開始。2002年4月より鉄道車両の一貫製造を行う米国で唯一の工場として、構体製作から車両完成までを手掛ける予定。


今後当社は、今回の受賞で実証された開発・技術力を、国内外の鉄道会社にアピールするとともに、現在設計中である台湾新幹線、受注活動中である北米案件をはじめとした、数多くの国内外の案件において、より安全な鉄道車両の開発・製造に注力していきます。