人間協調・共存型ロボットによるフォークリフトの代行運転に成功

2001年06月28日

川崎重工は、東急建設(株)、独立行政法人産業技術総合研究所と共同で、人間型ロボットによるフォークリフトの代行運転に成功しました。これは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が1998年度から進めている「人間協調・共存型ロボットシステム」の研究開発に関し、財団法人製造科学技術センターの研究開発委託を受けて実施したものです。

近年、人間協調・共存型ロボットを用いて安全かつ快適な環境にある場所から遠隔操作し、災害復旧現場などの危険な作業空間や土木建設現場などの悪環境下で、あたかも人間の分身として車両や機械が操作できるような応用システムの実現が望まれています。今回当社が実施したフォークリフトの代行運転はこのような応用を目指して行ったもので「人間協調・共存型ロボットシステム」プロジェクトの中で2000年度までに開発した遠隔操作マスターシステムを使って人間型ロボットを遠隔操縦し、フォークリフトへの乗り込み・運転操作を実現したものです。

当社が開発を担当した遠隔操作マスターシステムは、ロボットの操縦時に操作者の視聴覚、力覚および触覚に対して高臨場感を付加するため、臨場感覚提示機能および操作指令入力機能を統合したもので、双腕でのロボットアーム・ハンド操作ができる「マスターアーム」と、ロボットの歩行やバランスを取るときの腰の動きを操作者に伝えることができる「体感提示装置」で構成しています。

フォークリフトの代行運転実験では、操作者が遠隔操縦で人間型ロボットに階段を登らせてフォークリフトに乗り込ませ、立ち姿勢状態において4つのレバーとハンドルを操作してフォークリフトを操縦し、パレットに積まれた荷物の移動を行いました。作業時間については、同様の作業を人間が直接操縦を行ったときの約3倍の時間で人間型ロボットによる代行作業が実現できています。

今回の研究・開発により、人間型ロボットが各種車両の代行運転を行う際の基本的な特性を得ることができました。今後とも当社は、建設・運搬用車両等を対象にした人間型ロボットの代行運転に関する研究開発をさらに進め、人間と同じように道具や機械を使いこなし、人間と協調・共存して複雑な作業が行える、高い安全性と信頼性を有する人間協調・共存型ロボットの実現を目指します。

□遠隔操作マスターシステムについて
遠隔操作マスターシステムは「マスターアーム」と「体感提示装置」から構成されています。
「マスターアーム」
人間の自由度と同じ片腕7自由度を持つアームで、手首部には2指把持操作ができる把持操作機構(2自由度)があります。操作者は手首部グリップを持ち、親指と人差し指にサックを装着して操作します。ロボット手首部で発生する力およびモーメントが手首部グリップに提示されるので、操作者はロボット手首部の外力を感じながら操作できます。

「体感提示装置」
操作者が両足で搭乗台に立ち、体感提示装置の腰掛け部に寄りかかり操作するスタンディング方式で、サーボモータによる直交3軸の並進駆動によって操作者の腰掛け部を上下・左右・前後に移動させます。これにより、操作者にロボットの歩行時の運動感覚やロボットがバランスを取るために動かす腰の動きを操作者に伝えることができます。