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CERN向けATLAS・バレルクライオスタットを出荷

2001年06月11日

川崎重工は、米国ブルックヘブン国立研究所より受注したATLAS(超伝導トロイド磁石検出器)・バレルクライオスタット(アルミ製高精密真空低温容器)を当社播磨工場より欧州合同原子核研究機構(以下CERN)に向けて出荷しました。出荷後はオランダ・ロッテルダムまでの海上輸送と欧州内でのライン川をさかのぼるバージ輸送を経て、7月上旬にスイス・ジュネーブ郊外にあるCERN本部へ納入されます。

CERNは、14兆電子ボルトの衝突エネルギーを有し、1周27km(JR山手線1周の約80%相当)におよぶ大型陽子・陽子衝突型加速器(以下LHC、Large Hadron Collider)をスイスとフランスの国境付近に2005年運転開始の予定で建設中です。本施設は物理学の基礎研究施設で、陽子と陽子を高エネルギー状態で衝突させることにより、宇宙の起源とされるビッグバンを再現するとともに、物質に質量を与えるといわれる未知の素粒子であるヒッグス粒子の発見を目指すことを目的としています。

今回出荷したバレルクライオスタットは、CERNが1994年から進めているLHCプロジェクトのLHCリング上に建設されているATLASの中心部に据え付けられるもので、米国ブルックヘブン国立研究所が設計・調達・建設を担当している低温容器です。重量約35t、長さ約7m、直径約5.5mの耐放射線性に優れたアルミニウム合金製シリンダーで、電子やガンマ線のエネルギーと位置測定などを行なうカロリーメーターを内部に保持するための構造物です。内筒・外筒の二重殻構造になっており、運転時にはマイナス186℃の液体アルゴンが内筒内に注入され、内筒と外筒の間は断熱のため、10-5Torr(トール)という高真空に保持されます。

当社は、バレルクライオスタットを1998年9月に国際競争入札でブルックヘブン国立研究所より受注しました。これは、保有技術・実績を評価する事前資格審査で当社の技術・実績が高く評価されたものです。バレルクライオスタットの製作にあたっては、内筒・外筒のそれぞれの製作要求精度が厳しく、内筒を外筒に組込むために特殊な治具を使用するなどの工夫をしました。また、厚板アルミの溶接にはLNG運搬船用の極低温タンク製造の技術を応用するなど、当社がこれまで蓄積してきた大型構造物の高精度加工技術、真空施工・検査技術など各種先端技術を集約しました。

当社は、これまでにKEK(文部科学省(旧文部省)高エネルギー加速器研究機構)トリスタン検出器用機器やSLAC(スタンフォード線型加速器センター)向けに素粒子検出用防磁構造体をはじめ各種検出器用機器の納入実績があります。また、当社は加速器全体のシステムとしても、自由電子レーザー装置の開発を1990年より行なっており、1992年には可視光域自由電子レーザー、2000年には光利用を目的とした赤外自由電子レーザー発振に世界で初めて成功した実績を持ちます。

なお当社はCERN向けに、バレルクライオスタット以外にもCMS(特殊磁場素粒子検出器)に据付けられる「エンドキャップヨーク(特殊磁場シールド)」を1998年12月に受注しており、その製作に関して、本年3月にCERNより、特に優れた技術力、プロジェクト管理を発揮した業者に贈られる「Crystal Award 2001」を受賞しています。今後も当社は物理学、化学をはじめ医療、機械、材料などさまざまな分野に活用できる加速器技術での社会的貢献を行なうともに、加速器分野でのこれまでの数多くの納入実績、経験を活かして、国内、海外を問わず積極的な営業活動を展開します。

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