掘進機を再利用する低価格シールド工法を開発、実用化

2001年06月06日

(株)新井組(本社:西宮市、社長:花房正次郎)と川崎重工業(株)(本社:東京都、社長:田﨑雅元)では、シールド掘進機の再利用を可能にするシールド工法「DSR工法」を共同開発しました。コストが大幅に低減できるほか、立坑の構築も1カ所で済むこと、しかも任意の場所に設定できることから、交通や周辺環境に与える影響も抑制できる画期的な技術です。

掘進機を使って地中にトンネルを構築するシールド工法では、これまで掘進機は工区完了後に一部の機器を取り外し、大部分を地中に埋没させていました。地中から掘進機全体を取り出し再利用するためには、発進基地とは別に大規模な立坑が必要となり、建設コストの問題から事実上不可能でした。
また、都市部の地下空間は、高速道路や地下鉄、上下水道など過密状態にある上、完工後に掘進機を埋没するスペースの確保も困難になっています。
地下建設工事の発進基地の場所選定に制限がなく、より少ない立坑で長い区間を施工でき、さらに掘進機の再利用ができるシールド工法への需要が高まっています。

DSR工法で用いる掘進機は、外胴部と内胴部の二重構造とし、カッター駆動用機器やジャッキなどで構成される駆動系統を内胴部に搭載します。1工区を掘進後、外胴部と同じ径を持つカッターフェイスを内胴部の径まで縮小、また内胴部に装備しているシールドジャッキの偏心金具を回転・収納した後、レール上を内胴部のみ引き抜きます。そして、引き抜いた内胴部は発進基地で新しい外胴部に再装備することで、別工区に再利用します。

当工法の採用により、これまで不可能だった掘進機駆動系統の大部分が再利用でき、掘進機の構成部品の再利用率は90%まで(従来は10%程度)高められます。すでにDSR第一号機が10月に、東京都下水道局発注の文京区本駒込一、三丁目付近再構築工事に採用されることが決まっています。両社は、発進の準備を進めるとともに、「DSR工法研究会」を発足し、技術向上・普及展開を図ります。その一環で、ホームページを使って迅速なサービスの提供に取り組み、ITを活用した公共事業における製品提供のモデルケースとします。

■DSR工法の特徴
(1)コスト削減効果
  掘進機を埋没処理する場合と比較して、2工区合計の掘進機にかかるコストが約30%削減できます。また、一つの立坑で2工区の施工ができ、工事全体のコスト削減効果もあります。
(2)高い汎用性
  どのような掘進機のスタイルにも対応でき、異なったシールド径にも再利用できます。また、広い用地を必要とする発進基地が一カ所で済むので、市街地での工事計画の自由度が高まります。
(3)周辺環境への影響低減
  渋滞や振動・騒音の原因となる立坑工事の縮小、削減につながり、工事周辺環境への影響も低減できます。
■DSR工法研究会の概要
所 在 地 東京都渋谷区恵比寿4-3-4
代 表 者 内賀嶋道隆
事業内容 DSR工法に関する工事コンサルティング及び工事受注活動