タイで細胞自動培養システムを使用した世界初のひざ軟骨細胞治療の臨床研究を実施

2016年12月27日

川崎重工は、タイのチュラロンコン大学との共同研究で、当社独自開発の細胞自動培養システム 「AUTO CULTURE(オートカルチャー)※1」を用いた間葉系幹細胞の自動培養に取り組んでおり、本日、同大学が培養された間葉系幹細胞を用いたひざ軟骨の細胞治療を実施しました。ロボット技術で自動培養した細胞での臨床研究は世界で初めてです。

当社は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とタイ商業省が共同で推進した再生・細胞医療プロジェクト(2011年度~2013年度)※2に参画し、チュラロンコン大学に「AUTO CULTURE」を設置するとともに共同研究契約を締結して、ヒト細胞の自動培養および治療実施に向けた実証実験を進めてきました。今回、同大学により、脇谷滋之教授(武庫川女子大学)が開発した「自己骨髄間葉系幹細胞移植による関節軟骨欠損修復法」を応用した細胞治療が実施されました。今後は、「AUTO CULTURE」で自動培養された細胞での臨床研究を引き続き行い、治療効果の検証を通してタイにおける医療技術・福祉の向上を目指します。

「AUTO CULTURE」は、高度なロボット技術を活かして、高品質な細胞培養過程を自動化することに成功したシステムです。再生医療の臨床応用では、患者から採取した細胞を培養し、細胞の数を増加させた上で、必要に応じて加工を行い患者の患部に移植します。その臨床応用に使われる細胞を培養する細胞培養加工施設は人の手作業を前提にしているため、作業室自体を非常に高いレベルの清浄度に保つことが求められる上、手作業で細胞培養を行う熟練した技術者が必要です。そのため施設の建設・維持管理に多額の費用がかかり、熟練した技術者の養成も必要で、これらが再生医療の普及への障壁となっています。「AUTO CULTURE」は、システム内を非常に高いレベルの清浄度に保った状態でロボットが培養作業を行うため、これらの課題を解決し、安全かつ低コストな再生医療の臨床応用に貢献します。

当社は、今回のタイのプロジェクトで培った技術をもとに、培養効率を向上させた「AUTO CULTURE」を開発中で、数年内に販売を開始する予定です。

当社は、今後ともロボット技術をはじめとする自動化技術、生産技術などの応用に取組み、再生医療の発展・普及に貢献していきます。

※1 AUTO CULTURE : 川崎重工の登録商標

※2 再生・細胞医療プロジェクト :
環境・医療分野の国際研究開発・実証プロジェクト

                 先進的医療機器システムの国際研究開発及び実証

                 再生・細胞医療技術および製造インフラ最適化の研究開発

【AUTO CULTUREの仕様】

対象細胞 : 接着系細胞

取扱容器 : T175フラスコ、T500フラスコ

装置寸法(W×D×H) : 6.4m × 1.65m × 2.4m (4インキュベータの場合)

設置環境 : クリーン度100,000(装置内部はクリーン度100)

除染機能 : 過酸化水素蒸気による自動除染

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【AUTO CULTURE】