低NOx水素ガス燃焼技術を開発 30MW級高効率ガスタービン「L30A」に適用・営業活動開始

2014年02月20日

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JAXA高温高圧燃焼試験設備での燃焼試験

川崎重工は、ガスタービンに搭載される当社独自の「追焚き燃焼方式※1」を利用したドライ・ロー・エミッション(DLE※2)燃焼器について、体積当たり60%の水素ガス混焼時に、NOx値を天然ガス焚き並みの25ppm (O=15%換算)以下に抑制する技術を世界で初めて開発しました。当社は、これより本技術を適用した自社開発の30MW級高効率ガスタービン「L30A」の営業活動を開始し、2015年度に市場投入する予定です。

NOxは空気中で燃料を燃焼する過程で生成され、生成量はその燃焼温度に強く依存します。DLE燃焼器は、燃料を空気と混合させて希薄な状態で燃焼させる予混合燃焼方式を採用することにより、水や蒸気の噴射に拠らず燃焼温度を低く制御することができ、経済的にNOx排出量を大幅に削減できますが、低NOx化と安定燃焼が両立できる燃料濃度に制御する必要があるため、特に水素ガス燃焼時には、燃焼速度の違いから水素がバーナ付近で燃える逆火等の不安定現象が発生しやすいという課題がありました。
当社は、これまでパイロットバーナ、メインバーナ、追焚きバーナの多段バーナ構成によるDLE燃焼器を開発・実用化しています。今回の技術開発では、実績のあるDLE燃焼器をベースとして、パイロットバーナとメインバーナは天然ガスを使用し、逆火等のリスクの小さい追焚きバーナを水素ガス焚き用に改良しました。これにより体積当たり60%(熱量換算30%)に相当する水素ガス混焼を実現し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の高温高圧燃焼試験設備にて低NOx性能を確認しました。

水素ガス混焼ガスタービンは、石油精製工場や石油化学工場から発生する未利用の副生水素ガスを有効利用することで、天然ガス使用量を低減し、COを削減することが可能です。本技術は、水素ガスを体積当たり0~60%(熱量換算0~30%)の任意の割合で利用可能で、ユーザーの副生ガス発生状況にフレキシブルに対応できます。副生ガス有効利用のニーズが高まる一方で、今後もNOxに対する排出規制は強化されることが予想されますが、当社は、さらなる低NOx化をDLE燃焼器で実現すべく、技術開発を進めています。

当社は、ガスタービン本体の高効率化とともに、低エミッション化および水素ガス利用の革新的な技術開発を進め、地球環境の未来に貢献していきます。

※1:

パイロットバーナ、メインバーナから噴出される燃焼ガスに加えて、追焚きバーナから空気と燃料を投入することで、燃焼の持続が難しい条件下でも燃焼を維持することができる方式。

※2:

水や蒸気の噴射に拠らず燃焼温度を低く制御することで、NOx排出量を削減する方式。

【構造イラスト】

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ガスタービン 当社のDLE燃焼器