液化水素運搬船用貨物格納設備の基本承認を日本海事協会より取得

2014年02月06日

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液化水素運搬船用貨物格納設備

液化水素運搬船
(貨物総容積:2,500m3

川崎重工は、液化水素運搬船に搭載する貨物格納設備(CCS:カーゴ・コンテインメント・システム)の基本承認(AiP:Approval in Principle)を日本海事協会より取得しました。

本基本承認は、IGCコード※1および船級規則に加えて、HAZID(Hazard Identification Study)解析法※2を用いたリスク評価結果に基づき、日本海事協会より付与されたものです。

今回基本承認を取得した貨物格納設備は、当社が開発中の世界初となる液化水素運搬船の液化水素格納部で、当社が液化天然ガス(LNG)運搬船および陸上の液化天然ガス/液化水素の貯蔵・輸送分野における設計・建造技術を基に新たに開発した極低温蓄圧式の液化水素専用貨物格納設備(容積:1,250m3)です。LNGに比べて蒸発しやすい液化水素の輸送に適した真空断熱構造※3を採用しています。

本貨物格納設備の主な特長は次の通りです。

(1)

極低温の液化水素を積載するため、貨物槽は船体に関係なく独自に低温収縮できる横置式シリンダー型圧力容器を採用しています。

(2)

外部からの侵入熱により発生するボイルオフガス(BOG)を耐圧構造の貨物槽内に閉じ込め、外部にBOGを出さない蓄圧方式を採用しています。

(3)

蓄圧方式の採用により、液化水素を貨物格納設備内に設置した揚荷ポンプのみならず加圧圧送にて揚荷することも可能です。

(4)

輸送中の液化水素の蒸発を最小限に抑えるため、新たに開発した真空断熱システムを採用し、二重殻貨物槽構造としています。

(5)

貨物槽の支持には、新たに開発した熱を伝えにくく、強度的にも優れたGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)を用いた支持構造を採用し、断熱性能のさらなる向上を図っています。

(6)

貨物槽の二重殻貨物槽構造にドームを追加し、点検用マンホールを設置することにより、ドック時の貨物格納設備の開放点検を可能としています。

わが国では燃料電池車の市場投入や代替エネルギー政策の加速により、近い将来、水素市場の拡大が予想されています。当社が市場投入を目指し、開発を進めている液化水素運搬船(貨物総容積2,500m3)は、貨物格納設備を2基搭載し、貨物格納設備を格納する船倉の船側ならびに船底などに二重船殻構造を採用し、衝突、座礁などの事故に対する安全性を確保するとともに、ホールドカバーにより、貨物格納設備を外部から保護し、外気と遮断する構造となっています。また、主機関にはディーゼル機関を採用する予定です。あわせて将来的なBOGの有効利用を見据え、燃料電池、水素ガスタービンなどの試験設備を有した船上実験室を併設する計画です。

当社は、今後とも、クリーンエネルギーとして需要増加が予想される水素をはじめとする各種ガスの運搬船の開発・建造に積極的に取り組んでいきます。

※1

IGCコード(International Code for the Construction and Equipment of Ships Carrying Liquefied Gases in Bulk) :液化ガスのばら積運送のための船舶構造および設備に関する国際規制。1986年以降に建造された全ての液化ガス運搬船に強制的に適用され、日本海事協会鋼船規則にも織り込まれている。

※2

HAZID解析(Hazard Identification Analysis) : システムの潜在的危険因子の発生頻度を専門家間の討議により決定し、その発生頻度を減少させるための対処方法を抽出するリスク評価手法の一つ。

※3

真空断熱構造 : 容器を二重構造とし、二重構造間を真空とすることにより、伝導および空気の対流による伝熱を遮断し、輻射伝熱を遮断する多層断熱材などを併用することで断熱性能を高めた構造。汎用品では "魔法瓶"の構造がこれに相当する。