新技術 -舶用技術-

「カワサキ」の先進技術

川崎パネルシステム

LNG運搬船モス型タンク用のパネル式防熱システム

川崎パネルシステムは、当社が独自に開発したLNG運搬船モス方式球形タンクおよび枕型タンク用のパネル式防熱システムです。1981年にわが国初大型LNG船"Golar Spirit"に採用して以来、四半世紀を迎えた現在まで、50隻以上の実績および受注があります。

川崎パネルの特徴

  • 信頼性の高い2層構造
  • 大型球形タンクから小型枕型タンクまで様々な形状に対応可能
  • 各船に応じて防熱性能の調整が可能
  • 世界最高性能の防熱性能 1日あたりの気化割合が全タンクの0.08%以下
  • 確実な防熱施工
  • 環境にやさしい発泡剤を使用

本防熱パネルは、2層から構成されています。低温側(タンクの内側)の層には、フェノール樹脂フォーム(PRF)と呼ばれるもので、冷却による亀裂または破裂が発生しない低温特性に優れた防熱材を使用しています。常温側(タンクの外側)の層には、施工現場で扱い易く、また防熱性能が優れた硬質ポリウレタンフォーム(PUF)を使用しています。PUFの発泡には、地球環境に優しいHFCフロン発泡剤を使用しています。
パネル表面はアルミプラスチックシートにより、水分および湿分を遮断しています。
各パネルはPUF とPRF層間に挟み込まれた補強用ワイヤーネットを連結して一体化され、タンクに取付けられたファスニングボルトとワッシャー(固定金物)により固定されています。

145,000立方メートル LNG運搬船のタンク1基当たりに、約6,000枚防熱パネルと約15,000本のファスニングボルトが使用されており、完成した様はまるで巨大なUFOのようで圧巻です。

川崎URA型 再熱蒸気タービンプラント

再熱蒸気サイクルの採用による、蒸気タービン推進プラントの熱効率の改善

このプラントには次のような特長があります。
現在、LNG運搬船で主に使用されている蒸気タービン機関では、蒸気をタービン翼に当て、タービンを回転させ(プロペラを回転させて)船を動かしています。蒸気の熱のエネルギーをタービンの回転のエネルギーに変換している訳です。この熱エネルギーの利用効率を飛躍的に向上させたシステムを開発しました。このシステムには次のような特徴があります。

  • 再熱サイクル・蒸気条件の改善・高効率な排ガスエネルギー回収装置(ガスエアヒータ)等を採用することで従来プラントに比べて、燃料消費率を約15%低減しました。
  • 原油タンカーで就航実績のある再熱蒸気タービン推進プラントの技術を応用し、また舶用主タービン&主ボイラの多くの製造実績を生かし従来プラントの高い信頼性を保持することに成功しました。
  • シンプルな蒸気サイクルの採用。さらにIntegrated Automation System(IAS)を搭載することより容易な操作系で省力化に寄与しています。
Intake
強圧送風機(Forced Draft Fan)で送られたボイラ燃焼用空気はガスエアヒータ(ボイラの燃焼ガスの排熱を利用して燃焼用空気を加熱する空気予熱器)で加熱されボイラに送られます。
Heat
ボイラは燃料と空気を混合して燃焼を行い、その燃焼ガスで高温・高圧の過熱蒸気を作ります。
発生した蒸気は高圧タービン(HP Turbine)へ流れて膨張、仕事をし、タービンを回転させます。
Reheat
高圧タービンで膨張、仕事をした蒸気は再びボイラで加熱され、高温の過熱蒸気となって中圧タービン(IP Turbine)及び低圧タービン(LP Turbine)で膨張、仕事をします。
Exhaust
一方、ボイラで蒸気を作った燃焼ガスは前述のガスエアヒータでボイラ燃焼用空気を加熱後、船外へ排出されます。

DFDEシステム

油とガス、2つの燃料を使えるエンジンを搭載したLNG船の開発

MAN Diesel & Turbo (マンディーゼルアンドターボ)提供

LNG運搬船では、カーゴタンク内で気化したガス(ボイルオフガス)を安全に処理する必要があるため、従来から蒸気タービンが推進プラントとして採用されています。ボイルオフガスをボイラで燃焼させて発生した蒸気でタービンを回し、動力をプロペラへ伝えて船の推進に利用しています。しかしながら、近年は代替推進システムの開発が盛んであり、当社でも様々な方式のプラントを検討してきました。現在は、DFD電気推進システムに重点を置いて開発を行ったエンジンを搭載したプラントも開発しています。

DFDとはDual Fuel Diesel(2元燃料ディーゼル)の略です。通常の発電機エンジンは燃料として油しか焚けませんが、このエンジンは油とガスの両方が焚けるためこう呼ばれています。

推進システムは、下図のように数台の発電機エンジンと可変速の推進モータ等で構成されています。ガスあるいは油を燃料としてエンジンに供給し、発生した電力で推進モータを回しこの動力をプロペラへ伝えます。このシステムには次のような特長があります。

  • 従来の蒸気タービンプラントに比べ熱効率を良くできます。
  • 熱効率が良いため、CO2の発生量が少なく環境への影響を少なくできます。
  • 燃料ガスの圧力がエンジン入口で5bar程度なのでガスの取り扱いは比較的容易です。
  • 複数のエンジン・推進モータで構成されており、どれか1台が故障しても残りの機器で運航を継続できます。