最適構造

船体構造の簡略化と剛性の強化

アップルスロット

従来構造とアップルスロットを採用した構造の比較

大型タンカー(VLCC)の二重船殻構造における従来型構造とアップルスロットを採用した構造の比較を示します。フロアなどの大骨のウェブプレートには、座屈防止を主目的として、所要の間隔でスティフナ(補強材の一つ)を設ける必要があります。
従来の大型船の二重底フロア構造においては、各ロンジ材(補強材の一つ)毎に直接、溶接固着する形でフロアプレート(骨組み材の一つ)上に垂直スティフナを配置しています。
一方、アップルスロットを採用した構造では、フロア構造全体の剛性確保を目的とした離散的に配置した垂直スティフナと、その垂直スティフナ間のフロアプレートのパネル分割を目的とした水平スティフナを組み合わせた複合防撓方式を採用しています。

この構造では、垂直スティフナを削減したことによって大骨ウェブへの伝達荷重が増加することになりますが、これに対応するために、スロットの形状を楕円形を含んだ特殊形状(アップルスロット)とし、応力集中を緩和しています。

従来型スロット
アップルスロット
  • 黄色で表示されている所が応力レベルが大きいところ

アップルスロットを採用した場合、垂直スティフナを削減したにもかかわらず、スロットまわりの応力レベルは小さくなります。
アップルスロット構造は、損傷の原因となる応力の高いロンジフェースとフロア付垂直スティフナの交差部の溶接部が減少し、構造面での信頼性が向上します。
さらには、ロンジと取り合う垂直スティフナおよびブラケットなどが少ないため、構造がシンプルとなり部材数の削減および建造時の自動化が容易となるなどの利点があります。