「Kawasaki News」は、川崎重工グループの和文PR誌として、多彩な製品群が陸・海・空に亘る各分野で活躍する姿と、
新製品・新技術の一端をご紹介しています。

最新号 185 Winter 2017

モーダルシフトの主役たちモーダルシフトの主役たち

モーダルシフトが加速している背景には、環境問題やトラックドライバー不足などの社会的課題が存在する。モーダルシフトでは鉄道輸送への期待が大きい。川崎重工は、機関車と貨車のリーディングカンパニーとしてモーダルシフトを支えている。

経営に貢献する物流戦略を支える

企業物流の戦略性が増している。物流改革を通して在庫を減らし、コスト削減効果を高める一方で、国内貨物輸送量の9割を占めてきたトラック輸送がドライバー不足という構造的な課題に直面しているからである。

これを受け国や運輸業界は、輸送手段を他の輸送機関に移す「モーダルシフト」を推進している。その期待に応えるのが鉄道貨物輸送で、それを担える唯一の機関がJR貨物である。

JR貨物の鉄道ロジスティクス本部長である大橋康利・取締役兼専務執行役員は、「輸送量は着実に増えています。地球温暖化防止のパリ協定が発効し、鉄道貨物輸送の環境貢献を荷主が積極的に活用しているのも一因です」と語る。大橋取締役によれば、中長距離輸送では競合するトラック輸送事業者や航空会社などからも問い合わせが増えているという。

鉄道貨物輸送には、他にはない優れた特徴がある。10tトラック65台分の荷を一人の運転士で運べる「大量輸送性」と「低コスト性」、CO2排出量がトラックの9分の1という「環境性」、JR貨物の列車は1日に地球約5周分の距離を走りながらも定時発着率は世界最高レベルの約95%を実現している「定時安定性」などだ。ユーザーからは、「入庫・出庫計画を立てやすい」「コンテナサイズが多彩なので、さまざまな荷姿に対応でき、積載率を上げられる」といった声も寄せられている。

鉄道貨物輸送の拡大は不可逆的な流れだろう。それは、競合する企業同士が商品を混載輸送したり、大手量販店が取引先企業の商品を一体的に取りまとめ、鉄道輸送に切り換え物流の総コストを削減しようとするなど、従来の常識では考えられなかった物流効率化への取り組みが相次いでいることからも分かる。

鉄道貨物輸送の安全性や高速性、定時性などを支えている縁の下の力持ちが、機関車と貨車だ。JR貨物は現在、全国で7967.9kmの営業路線に電気機関車430両、ディーゼル機関車160両、コンテナ貨車7243両を投入している他に私有貨車が1883両ある(平成28年4月1日現在)。

大動脈である東海道・山陽本線や日本海縦貫線を走る「EF210」、「EF510」の電気機関車や、貨物電車の「M250」、また厳寒の北海道で活躍する機関車の「DF200」などはいずれもJR貨物と川崎重工が共同で開発、製造してきた。他社製の機関車についても、台車のすべてが川崎重工製だ。

川崎重工は貨車でも、空気圧だけではなく電気式ブレーキに対応する最新の「コキ107」を製造。名実共に機関車と貨車の開発・製造においてリーディングカンパニーとなっている。

1 2 3 4 日本で1番長い距離を走る貨物列車の走行距離は

日本で1番長い距離を走る
貨物列車の走行距離は

2,130km

日本で一番長い距離を走る貨物列車は、札幌貨物ターミナル駅と福岡貨物ターミナル駅を結ぶ貨物列車で、その距離2,130km。37時間で結ぶ。

1日当たりの列車運行距離は地球を

1日当たりの
列車運行距離は地球を

4.8周分

全国約8,000kmの鉄道網に、毎日約500本の貨物列車を運行。1日当たりの走行距離は19.3万kmで、地球の約4.8周分に相当する。

貨物列車1本の輸送能力は

貨物列車1本の輸送能力は

10トントラック65台分

貨物列車の1編成あたりの輸送能力は、最も長い26両編成で約650t。10tトラック65台分に相当する。

コンテナの平均輸送距離は

コンテナの平均輸送距離は

900km

鉄道輸送は中長距離を得意とする。コンテナの平均輸送距離は約900km。

世界最高レベルの機関車と貨車をつくる

JR貨物の拠点駅のひとつである東京貨物ターミナル駅(東京都品川区)

発注者として機関車や貨車の品質管理を担っている山本直人グループリーダーは、「私たちがメーカーに求める仕様基準は、非常に高いレベルだと思います」と語る。

輸送事業者として安全・安定運行が求められるのは言うまでもなく、またJR貨物が旅客会社の路線を借りて運行していることも理由のひとつだ。各社の列車運行の合間を縫って走る過密ダイヤのなかで輸送サービスの向上を図るには、機関車と貨車の両方に高速走行性能と故障の少なさが求められる。連結されている貨車の1両が故障するだけで列車は止まり、線路寸断と同じ打撃を受ける。大量輸送だけに社会的な影響も大きくなる。

またJRの在来線では、軌道や橋梁の強度的な制約から、車両の軸重(ひとつの車軸によりレールにかかる車両の重さ)は16.8tに制限されている。海外では、車両の軸重が20tを超えている国もある。

日本貨物鉄道株式会社
鉄道ロジスティクス本部 車両部
山本 直人 グループリーダー(品質管理)

「狭軌、勾配やカーブが多い国土地形、天候の違いなど、さまざまな制限や技術課題がありながら、最大1300tの貨車と荷を引く機関車や、それに耐えられる貨車を実用化している国などありません。日本の機関車と貨車は世界最高レベルにあります」(山本グループリーダー)。

川崎重工で機関車や貨車の開発と設計を担っている川東哲也基幹職は、「機関車では総合性能の極大化、貨車では最高品質の実現をめざしています」と語る。

機関車では例えば、「国鉄最強の電気機関車」と言われた「EF66」の後継機であるEF210は、「30分定格出力」という考え方を投入した。一定時間に出せるフル出力が定格出力で、通常は1時間当たりで示す。実際EF210も「1時間定格出力は3390kW」だ。しかしEF210は同時に、「30分定格出力3540kW」と1時間よりも強いパワーを発揮する。

これは東海道・山陽本線で補助機関車を必要としない最大の山越えである関ヶ原の勾配区間に対応したものだ。つまり路線の勾配による機関車の入れ替えをなくした柔軟な運用を技術がサポートしたのである。そのためのVVVFインバータ制御や三相交流誘導モータの活用など、総合性能の向上が図られてきた。

また機関車の台車は、「万が一があってはならないもの」であり、剛性や耐性、ギア技術などのあらゆる機械技術が結集されている。JR貨物で新製しているすべての機関車の台車が川崎重工製であるのも、「長年の開発で培われた技術的なノウハウが集約されているからに他なりません」(山本グループリーダー)。

輸送サービスの充実に貢献するものづくり

一方、新製の貨車を見ると、素人目で見てもキャンバー(車体台枠中央部の盛り上がり)があるのが分かる。コンテナの荷重を吸収して貨車の安定性を高めるためだ。また貨車は箱形の客車とは違い二次元の平面に近い構造であり、コンテナを積載している時としていない時では全体の重さが変わり、載せていない時は安定性が悪くなる。それを高速で走らせる際の安定性の確保も考慮されている。

貨車は単純な構造に見えても、安全運行や新技術を盛り込むための微妙な加工や組立など、ものづくりの力が遺憾なく発揮されている。

モーダルシフトでは、海運コンテナの鉄道輸送への直接の積み替えがサービス拡充の節目になる。しかし、海運コンテナは背高なので貨車に載せると車両限界を越えることから、路線拡充の壁になっている。「床面高さを下げる貨車の開発が必要です。貨車全体の構造見直しなど多くの技術課題があり、知見をフル動員して開発に取り組んでいます」(山本グループリーダー)。

川東基幹職は、「故障が少なく、保全作業が簡単で回数も減らせる。つまり、安定した性能を長く発揮できる機関車や貨車の開発は、お客さまのビジネスの拡充を側面から支えるものであり、お客さまのニーズを十分に把握する作業に力を注いでいます」と語る。

川崎重工でJR貨物への営業を統括する吉澤基勝営業部長は、「過酷な運行環境のなかで30年も40年も使用できる機関車や貨車をつくるのは、JR貨物様とメーカーの蓄積された努力の結果であり、その価値をもっと世の中にアピールしたい」と語る。

その上で、鉄道輸送という公共的な使命を支えるために、「確固たる信頼関係を築き、万全の品質確保に注力する。機関車・貨車から新幹線車両、並びに陸海空の幅広い輸送機器メーカーとして、総合力で貢献していくのが川崎重工の責務だと思っています」と語る。

川崎重工が日本で初めて電気機関車の国産化に成功したのは1924年(大正13年)のことだった。故障が少なく、外国製にも劣らない品質が確認された。以来、時代の課題に応えていくための挑戦が止むことはない。

川崎重工業株式会社
車両カンパニー 技術本部
設計部 第一設計課 川東 哲也基幹職

川崎重工業株式会社
車両カンパニー 営業本部
東部営業部 吉澤 基勝部長

「コキ107」貨車の製造過程(@川崎重工播磨工場)

鉄鋼メーカーから届けられた車輪、車軸などの基本部品。

台車にブレーキや配管を施して完成させる。安全に直結する一番気をつかう作業だ。

荷台となる台枠。「台枠総組立溶接」では、切り出された鋼板や鉄材を溶接でつないでいく。台車を受け止める「枕はり」部分ではロボット溶接も活用。

荷台となる面の溶接時に発生した歪みなどを測定して弓なり状に加熱修正する。川崎重工のノウハウがあってこそ成せる技だ。

台枠にコンテナの止め金具(緊締装置)や連結器、手動ブレーキなどを艤装していく。

台車の上に台枠を乗せて貨車が完成する。これで荷重40.7t、自重18.6t、時速110km走行が可能なコキ107が完成した。

Customer's VoiceCustomer's Voice

日本貨物鉄道株式会社
鉄道ロジスティクス本部長
取締役兼専務執行役員
大橋 康利 Yasutoshi Ohashi

モーダルシフトのさらなる変化へ。

「キーパートナー」として期待。

モーダルシフトを加速させるのは、一企業の利害を超えて、環境やエネルギー問題に資するための重要な取り組みであると考えています。

そのためにJR貨物では、10tトラックにそのまま乗せられる31フィートコンテナの開発や輸送量が多い路線のダイヤの拡充、大口ではないが物流改善を望んでいらっしゃるお客さまへの利用促進策の制定、集配体制の整備、さらに東京貨物ターミナル駅での大型物流施設の建設など、さまざまな形でのサービスの充実に努めています。

お客さまが求めていらっしゃるのは、「安全で、安定して、速く、そして安く」荷物を運べることです。この期待に応えるための重要な取り組みのひとつが、機関車や貨車の開発です。すでに幹線では最高時速110kmを実現していますが、これは川崎重工さんが私たちと共に実現に努力してくれた成果でした。

もちろん課題は尽きません。高速機関車や、交流と直流のどちらの路線でも走れる全国統一型の交直両用機関車の開発、IT活用を含めて運転士がより安全に運転できる「人にやさしい機関車」の開発を期待しています。

川崎重工さんは、新製車の開発では斬新な提案をしてくれる一方、トラブル発生時にはごまかしのない誠実な対応をしてくれています。その姿勢は、私たちのビジネスをしっかりと支えてくれています。

今後JR貨物は、海外での貨物輸送網の構築に協力していく方針です。その際には、「キーパートナー」として現地の人のための機関車や貨車の開発に一緒に取り組んで欲しいと考えています。

充実のネットワークとサービス

JR貨物による鉄道貨物輸送サービスは、全国150か所のコンテナ取り扱い駅を結んだネットワークで主に以下の点で強みを発揮し、顧客のニーズに応えています。

◎ 中長距離の輸送でコストメリット
◎ BCP(事業継続計画)対策に最適
◎ 高い安全性と定時性
◎ 片道輸送でご利用が可能
◎ 貨物のコンテナ一時保管サービス
◎ 用途・貨物に応じたコンテナラインアップ

また、陸上輸送と海上輸送を一体にした「Sea & Rail」では、すでに国内ネットワークだけではなく韓国、中国への路線網を構築済みです。近年ではトラック運転手の不足、長距離運行における規制強化などから、より安定的に輸送手段を得る目的として、モーダルシフトを検討するケースも増えています。「輸送の選択肢を増やしたい」「輸送コストの低減を検討したい」「環境に優しい輸送を検討したい」などの考えがありましたら、下記のお問い合わせ先までお問い合わせ下さい。

【お問い合わせ】
日本貨物鉄道株式会社(JR貨物)
本社 営業部 担当:種田(おいだ)、久保田
TEL :03-5367-7396
URL:http://www.jrfreight.co.jp

鉄道コンテナ輸送の仕組み

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